私の体験談:分厚い眼鏡から裸眼生活へ
私は生まれた時から「遠視の弱視」で、小学校に入った時から分厚いレンズの眼鏡をかけていました。眼鏡を少し浮かせると、相手側から目が巨大化して見える虫眼鏡のようなあれです。そこから30歳までは、眼鏡をかけていないと文字が見えないという前提で生きてきました。
そして30歳の頃にある体験で、眼鏡なしでも小さな文字が読める方法を発見しました。それは、1分程ある一点を集中して見続けると、その直後は視界に入る風景がくっきり見えるという体験でした。普段は滲んで見える時計やカレンダーの文字がくっきり見え、壁紙の凹凸の模様までがしっかり見える。子供の頃から裸眼でくっきりものが見える経験をしたことがなかった私にとって、これはなかなかに衝撃的な体験でした。
そこから定期的に、この一点を見つめるトレーニングを行うようになりました。すると大きめの文字の本から少しずつ裸眼で読めるようになり、2年後の免許の更新では人生ではじめて「眼鏡等」の制限が外れて、裸眼で車の運転もできるようになりました。
なぜ見えるようになったのか?私なりの気づき
この体験で気付いたのは、子どもの頃から目が見えないのが当たり前だったので、そもそも見ようとしていなかったということです。一点集中でもの見るという動作を行ったことで「見る力」をはじめて使ったという感覚でした。
人が持つ様々な能力は、使えば伸びるし使わなければ衰えます。今まで使ってこなかった「見る」という動作を定期的に行うことで、少しずつ見る力が付いていったと感じています。
そこでふと気になって、目の筋肉というものを調べてみました。すると、目にも毛様体筋という筋肉があり、ピント調整に関わっているということを知りました。毛様体筋は、さまざまな距離にある物体を見るための調節機能をコントロールしている筋肉とのことでした。
なるほど、ではこの毛様体筋を鍛えればくっきり見る力と集中の持続力がアップするのでは?という閃きから、一点集中を筋トレとして継続するようになったというのが今回のお話のきっかけです。
科学的研究による一点集中トレーニングの効果事例
一点を見つめる訓練について調べてみると、実は眼科学の分野で多くの研究が行われていることがわかりました。
輻輳不全の改善事例
国立眼研究所が資金提供した大規模な臨床試験では、一点を見つめるペンシルプッシュアップという訓練により、目の協調機能に問題のある子供の75%で正常または著しい症状改善が確認された。
📖 Boston Children's Hospital - Vision Therapy FAQ調節機能不全の治療効果
調節機能不全(ピント調整の問題)を持つ子供たちに対する研究では、一点注視を含む視覚訓練により、近距離作業時の集中力向上と症状軽減が確認された。国立衛生研究所のデータによると、人口の最大10%がこの調節機能不全を経験しており、適切な訓練により多くの場合で改善が見られるとされる。
📖 NCBI - Accommodative Insufficiency毛様体筋の訓練効果
中国で行われた子供を対象とした研究では、毛様体筋を意識的に使う訓練により、動的視力と裸眼視力の改善が統計的に有意に確認されました。特に1-3秒間の視覚集中が最も効果的とされ、継続的な訓練により眼軸の伸長率も抑制されたと報告されています。
📖 Frontiers in Public Health - Effect of physical activity combined with extra ciliary-muscle training高齢者でも効果を確認
80歳前後の高齢者を対象とした研究では、毛様体筋は高齢になっても収縮機能を保持しており、近距離刺激に対して明確な活動を示すことがfMRI(脳機能画像)で確認。これは年齢に関係なく、意識的な訓練により目の機能改善の可能性があることを示唆。
📖 Scientific Reports - The accommodative ciliary muscle function is preserved in older humansこれらの研究結果を見ると、私が体験した「一点を見つめる訓練による見え方の変化」は、医学的にも説明可能な現象であることがわかりました。特に、遠視による調節負荷が高い状態から、効率的な調節機能への改善は、典型的な治療成功例と一致しているようです。
あなたも「見る」意識を変えてみませんか?
目の機能や状態は人それぞれですので、決して万能な方法ではないと思いますが、もし自分も普段から意識してものを「見る」という行動をしていないなと思う方は、すぐにできるのでぜひ試してみてください。持続的な見る力の向上にはトレーニングの継続が必要ですが、瞬発的な効果は60秒のトレーニングで感じられます。一点集中トレーニングを行った直後は、いつも見ている景色がいつもよりくっきりと見えるはずです。
元々自分用に作ったものですが、手軽に目の筋トレができるアプリがありますのでぜひご活用ください。ブラウザですぐに試すことができます。また、Androidをお使いの方はアプリ版もありますので、継続的なトレーニングにお役立てください。
「見る」という意識を変えることで、少しでもあなたの生活の向上に繋がりますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
📚 参考文献・出典
- Boston Children's Hospital. Vision Therapy Service - Frequently Asked Questions. https://www.childrenshospital.org/programs/vision-therapy-service/faqs
- NCBI Bookshelf. Accommodative Insufficiency - StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK587363/
- Frontiers in Public Health. Effect of physical activity combined with extra ciliary-muscle training on visual acuity of children aged 10–11. https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2022.949130/full
- Scientific Reports. The accommodative ciliary muscle function is preserved in older humans. https://www.nature.com/articles/srep25551
- PMC Articles. Effects of physical activity combined with different visual target presentation durations of ciliary-muscle training on visual acuity in children. PMC10394291
- Wikipedia. Ciliary muscle. https://en.wikipedia.org/wiki/Ciliary_muscle