あなたの目の疲れ、それは当然の反応です

まず知っていただきたいのは、デスクワーク後の目の疲れは、あなたの目が正常に働いている証拠だということです。厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づく調査によると、VDT(Visual Display Terminal)作業に従事する方の約90%が目の疲れを経験し、68.6%が身体的な疲労を感じています。つまり、あなたは決して一人ではありません。

90%
VDT作業者が感じる目の疲れ
15回
通常の1分間のまばたき
5回
PC作業中の1分間のまばたき

画面を見つめるとき、あなたの目は普段より約3分の1にまばたきの回数が減ります。そして、近距離にあるディスプレイに焦点を合わせ続けるため、目の筋肉は常に緊張状態にあります。これが疲労感の主な原因なのです。

科学が証明する、目のケアの重要性

近年の研究で、適切な目のケアが私たちの生活の質に大きく影響することが明らかになってきました。アメリカ検眼協会(AOA)によると、デジタル機器の使用による眼精疲労は、適切な対策により軽減できることが示されています。

デジタル眼精疲労の研究動向
COVID-19パンデミック以降、デジタル眼精疲労に関する研究が急激に増加しました。PubMedのデータによると、1973年から2019年までに395件の研究が発表されたのに対し、2020年以降の約3.5年間で544件の研究が発表されています。これは、この分野への関心の高さと重要性を物語っています。

※効果には個人差があります。継続的な実践が重要です。
"デジタル機器を見ることで永続的な目の損傷が起こることはありませんが、不快な症状は確実に起こります。適切なケアにより、これらの症状は軽減できます。"
— アメリカ眼科学会(AAO)

今すぐできる!目のケア方法

難しいことは必要ありません。以下の方法を、あなたのペースで取り入れてみてください。

🕐 20-20-20ルール(世界標準のケア方法)

アメリカ眼科学会・検眼協会推奨の簡単な習慣

この方法は、1990年代にJeffrey Anshel博士によって提唱され、現在ではアメリカ眼科学会アメリカ検眼協会が推奨しています。

  • 20分間のパソコン作業の後
  • 20秒間作業を中断し
  • 20フィート(約6メートル)先を見る

この簡単な習慣だけで、あなたの目の負担は軽減されます。

👁️ 6つの目のエクササイズ

目の様々な筋肉をバランスよく動かすことで、疲労を和らげ、本来の目の機能維持に役立ちます。これらのエクササイズは、神経科学の基礎研究に基づいた4つの基本的な眼球運動を応用したものです。

🔴

基本注視

両目で一点をじっと見つめることで、散漫になりがちな集中力を整えます。基本的な固視機能の維持に役立ちます。

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スムーズ追従

なめらかな視線移動で、こわばった目の筋肉をほぐします。滑動性追従運動を強化し、読書や資料確認がスムーズになります。

サッケード

素早い視点切り替えで、反応速度を維持します。跳躍性眼球運動により、画面と書類を行き来する作業に役立ちます。

🔍

遠近調節

焦点調節機能のメンテナンス。一日中近くを見続けた目に、自然な柔軟性を取り戻します。

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収束運動

両眼の協調性を整えます。輻輳・開散運動により、立体的な視覚や距離感の精度向上をサポートします。

フィギュアエイト

8の字の動きで、目の全方向の筋肉を総合的にケア。一日の疲れをリセットします。

あなたの目を守る環境づくり

エクササイズと合わせて、日々の環境を少し工夫するだけで、目の負担は格段に軽くなります。

💡 照明の調整

  • 画面と周囲の明るさの差を少なくする
  • 直接光が画面に反射しないよう配置を調整
  • 目の高さに合わせてモニターの位置を調整

⏰ 時間管理

  • 1時間ごとに5〜10分の休憩を取る
  • 休憩中は遠くの景色を眺める
  • 意識的にまばたきの回数を増やす

🥛 全身のケア

  • 十分な水分補給で目の潤いを保つ
  • 質の良い睡眠で目の疲労を回復
  • 栄養バランスの取れた食事を心がける

継続のコツ:小さな習慣から始めましょう

完璧を目指さず、あなたのペースで続けることが一番大切です。

成功する人の共通点

  • 1日1分から始める → 無理をしないことが継続の秘訣
  • 同じ時間に行う → ランチ後、夕方など決まったタイミングで
  • 記録をつける → カレンダーにチェックマークをつけるだけでOK
  • 効果を実感する → 目の疲れの変化を意識的に観察

重要なのは毎日少しずつでも続けることです。あなたの目は、きっとその努力に応えてくれるはずです。

⚠️ 大切なお知らせ

目の痛み、視界のぼやけ、頭痛などの症状が続く場合は、我慢せずに眼科医にご相談ください。あなたの目の健康は何より大切です。専門医による適切な診断と治療を受けることをおすすめします。

✍️ 執筆者情報

川原健太郎のプロフィール写真
執筆者:シンユー合同会社 代表 川原 健太郎

弊社は映像制作を本業としてきた中で、人が「目で見る」という行動や目の機能・特徴についても意識して業務を行ってきました。私自身が生まれながらに遠視の弱視で視力が悪かったこともあり、自分自身でも視力回復のアプローチや目のケアをいろいろと試してきました。その中で培った知識や経験を元に目についての情報をエビデンスを参照しながらまとめて情報発信を行っています。少しでもお役に立てますと幸いです。

📚 参考文献・出典

  1. 厚生労働省. 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン. 2019. https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000548749.pdf
  2. American Academy of Ophthalmology. Computers, Digital Devices and Eye Strain. https://www.aao.org/eye-health/tips-prevention/computer-usage
  3. American Optometric Association. Computer Vision Syndrome. https://www.aoa.org/healthy-eyes/eye-and-vision-conditions/computer-vision-syndrome
  4. Neuroscience 2nd edition. Types of Eye Movements and Their Functions. NCBI Bookshelf. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK10991/
  5. Sheppard AL, Wolffsohn JS. Digital eye strain: prevalence, measurement and amelioration. BMJ Open Ophthalmol. 2018. PubMed: 29963645
  6. Pucker AD, Kerr AM, Sanderson J, Lievens C. Digital Eye Strain: Updated Perspectives. Clin Optom (Auckl). 2024. PMC11416787

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